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相続税が非課税でも申告が必要になるのはどんなとき?


相続税が非課税であったとしても申告が必要となる場合があることをご存知でしょうか。

相続税の申告を怠ると、通常よりも多くのお金を支払わねばならない事態にもなりかねません。

そこで今回は、相続税がかからない範囲とその基準、そして相続税がかからなかったとしても申告が必要となるケースについてまとめました。

なお大まかな相続財産がすでにわかっており、申告書の提出が必要かどうかをひとまず確認したい方は、国税庁サイトの申告要否の簡易判定シートをお使いください。


1.相続税の申告が不要なケース

  • 1-1.課税価格合計が基礎控除額以下

    基本的に相続財産の合計が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。このとき申告も必要ありません。

    基礎控除額とは、相続財産の課税価格合計から差し引ける額のことです。

    ■基礎控除額の計算式

    基礎控除額の金額は3000万円+(600万円×法定相続人の数)となります。

    そのため法定相続人の数で基礎控除額が異なります。

    例えば法定相続人が4人の場合、

    3000万円+600万円×4=5400万円

    5400万円が基礎控除額となります。

    基礎控除額が相続財産よりも大きければ相続財産の課税価格は書類上0円となり、相続税も0円です。

    ■法定相続人について

    法定相続人とは民法上で定められている相続人を指します。

    実際に相続する人やその人数ではありませんのでご注意ください。

    ■相続財産の課税価格について

    相続税の課税対象となる財産の価格のことです。

    現預金等は金額がそのまま課税価格となります。

    不動産や生命保険金、死亡退職金等はそれぞれ課税価格の計算が別途必要です。

  • 1-2.障害者控除や未成年者控除等を利用して相続税が0円

    相続税には各種控除が設けられており、条件を満たすことでさらに相続税が安くなります。

    上記でご紹介した基礎控除と下記の控除制度を利用して相続税額が0円となれば、申告も不要です。

    控除を利用しても相続税が1円以上発生する場合は通常どおり申告は必要です。

    ■障害者控除

    財産を相続する法定相続人の中に一定の要件を満たす85歳未満の障害者がいる場合に、

    その障害者である相続人から一定の金額を相続税から控除するというものです。

    課税価格からではなく、相続税そのものから控除できる数少ない控除制度です。

    障害者控除の額は区分によって計算式が異なります。

    一般障害者の場合:(85-相続時の年齢)×10万円

    特別障害者の場合:(85-相続時の年齢)×20万円

    なお障害者控除は「法定相続人」かつ「財産を相続する」ことが前提です。

    遺言で指定された法定相続人以外の障害者は利用できません。

    ■未成年者控除

    20歳未満の未成年者である法定相続人が財産を相続した場合に、一定の金額を相続税から控除するというものです。

    未成年者控除も相続税そのものから控除可能な制度です。

    未成年者控除の計算式は以下のとおり。

    (20-相続時の年齢)×10万円

    たとえば10歳で法定相続人となった場合、

    (20-10)×10万円=100万円

    100万円を相続税額から控除できます。

    ■相次相続控除

    相次相続とは、短期間に何度も相続が発生することです。

    たとえば年齢の近い夫婦のケースでは、相次いで亡くなることも考えられますね。

    このような場合には税金を短期間で何度も支払うことになり、相続人にとっては相続税が大きな負担となりかねません。

    相次相続控除は、このような短期間に重複する相続税の支払いを軽減する制度です。

  • 1-3.財産を受け取らない

    相続人に指定されていたとしても、相続財産を受け取らない人は申告も不要です。

    相続税の申告が必要となるのは基本的に、相続財産を取得し、かつ相続税がかかる場合です。

    *一部控除利用を除く

    したがって財産を受け取らない相続人には申告の義務はありません。

    ただし一般的に申告書は相続人全員の連名により税務署に提出します。

    そのため多くの場合においては財産を受け取っていなくても申告書に署名することとなるでしょう。

  • 1-4.生命保険等の非課税枠以下

    生命保険金や死亡退職金には、基礎控除とは別に非課税枠が定められています。

    受け取った生命保険金等がこの非課税枠以下であれば、相続税の申告は不要です。

    なお非課税枠は500万円×法定相続人の数で計算されます。

    たとえば法定相続人が1人で、受け取った生命保険金が500万円であった場合を検討しましょう。

    生命保険金の非課税枠は500万円です。

    この非課税枠におさまっているので生命保険金は全額が相続税非課税となり、相続税がかかりません。

    他の相続財産の相続税も計算して基礎控除額以下なら申告は不要です。

2.相続税が0円でも申告が必要なケース


相続税額が0円であっても申告が必要なケースも存在します。

具体的には以下の6パターンが代表的です。

  • 2-1.配偶者の税額軽減を利用

    亡くなった人の配偶者が財産を相続する場合、配偶者の税額軽減制度が利用できます。

    この制度は1億6000万円もしくは配偶者の法定相続分のどちらか大きい方まで、相続税がかからないというものです。

    控除額が非常に大きいため配偶者の税額軽減を利用すればほとんどのケースで相続税はかかりません。

    しかし相申告書の提出義務はありますのでご注意ください。

  • 2-2.小規模宅地の特例を利用

    亡くなった人が住んでいた土地や、事業用地として使っていた土地について、一定の要件を満たす場合、その評価額を減額するという制度です。

    小規模宅地の特例を利用した場合、評価額が最大80%減額されます。

    たとえば評価額1億円の土地を相続する場合、小規模宅地特定を利用すれば最大8000万円が減額でき、

    相続税を大幅に圧縮できます。

    この特例を利用する場合も申告書の提出が必要です。

  • 2-3.農地の納税猶予の特定を利用

    相続する土地のうち、農地や生産緑地で一定の要件を満たしている場合、

    相続税の納税が猶予されるという特例です。

    なおこの特例を利用し、相続人が一生涯その土地で農業を続ければ納税猶予された相続税額は免除されます。

  • 2-4.特定計画山林の特例を利用

    農地と同様に、山林においても一定の要件下で納税猶予が認められています。

    特定森林経営計画が検討されている区域内の山林を相続した場合に利用できる特例です。

  • 2-5.特例事業承継税制を利用

    非上場株式の場合でも一定の要件下で納税猶予が認められています。

    納税猶予割合が100%になるためには、令和5年3月31日までに特例承継計画を提出しておく必要があります。これについては、相続が発生する前に手続が必要なので、詳しくは税理士に相談してください。

  • 2-6.相続財産を寄付

    相続した財産を国や特定の公益法人に寄付すると、寄付した財産については相続税が非課税になります。

    寄付した事実が確認できる書類とともに申告書を提出してください。


3.相続税の申告をしなかったら


相続税の申告が必要にも関わらず申告せずにいた場合、非常に不利になる可能性があります。

上記の特例は申告書を提出することで利用可能となるため、提出を怠った場合は利用できません。

たとえば配偶者控除を利用して相続税が0円であったとしても、申告書を提出していなければ配偶者控除を利用しなかった場合の相続税額がかかるということです。

また後日税務署からの指摘により申告書の未提出が発覚した場合、

追徴課税がなされるためさらに多くのお金を支払うことになります。

相続が発生したら、相続税が発生するのかと同時に申告書提出が必要かどうかもチェックしておきましょう。

4.相続税の申告は税理士に相談を


相続税が0円になるケースでも、その理由によっては申告書の提出が必要な場合があります。

また特例の利用には細かな要件が定められており、相続に適用できるのかの判断が難しいケースも存在します。

相続が発生したら、まず相続税に詳しい税理士に相談しましょう。

国税庁サイトの申告要否の簡易判定シートはこちら

畑会計事務所では、このような相続に関する疑問等に対し、サポートを行っております。


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