不動産で相続税対策ができるのって本当?その真実に迫る
これからも生きていく大切な家族のために、自分の資産は1円でも多く遺してあげたいものですよね。
そこで相続税対策を検討するにあたり、「マンションを購入すると相続税対策になるらしい」と聞いたことはないでしょうか?
実はマンションの購入は相続税対策になります。
今回は不動産を利用した相続税対策についてご説明します。
目次
1.不動産の活用で相続税対策ができる理由
不動産を購入すると相続税が軽減されます。
その理由は現金よりも不動産(建物や土地など)の方が、相続税の課税評価額が低く見積もられるためです。
なぜ、低く見積もられるかというと、不動産は売ろうと思ってもすぐ売れないですし、思った通りの値段で売ることも簡単にはできません。
そのリスクを見越して相続税評価額を低くしているのです。
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1-1.課税評価額とは?
課税評価額とは、相続税を計算するための財産の評価額を指します。
たとえば土地や株式などは、購入した時の金額から変動していることがよくありますよね。
そのような「現金でない財産」「価値が変動する財産」も、金額を確定させなければ相続税の計算ができません。
ですから相続税を計算する時、「相続税評価額」として、その財産の価値をすべて日本円に換算して計算するのです。
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1-2.課税評価額を決めている規定
課税評価額は原則として相続開始の時価ですが、様々な例外が「財産評価基本通達」に定められています。
この「財産評価基本通達」に定められている評価方法の多くは、時価よりも低く評価できるのです。
つまり「財産評価基本通達」を使いこなすことで、課税評価額を下げ、相続税を軽減できるということです。
なお「財産評価基本通達」は、税の基本知識がない人が読んで正しく理解するのは極めて困難です。
相続税対策を検討されるなら、相続税に長けた税理士に相談されるのが良いでしょう。
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1-3.現金と不動産の課税評価額の違い
「財産評価基本通達」によると、現金と不動産の課税評価額は大きく異なります。
それぞれの課税評価額を確認しましょう。
■現金の課税評価額
現金の課税評価額は、預金通帳の額面ほぼそのままになります。
普通預金:相続開始時の残高
定期預金:相続開始時の残高に既経過利息を加えた額
*既経過利息とは、相続開始時までに発生している未払い利息のこと
■不動産(土地・建物)の課税評価額
土地の課税評価額は時価の8割程度。
に抑えられます。
したがって分譲マンションを購入した場合、現金のまま相続させるより相続税が安くなります。
土地:倍率方式または路線価方式により課税評価額が決定されます。
国税庁サイトの財産評価基準書のページから、評価倍率表に記載があるかを確認します。
記載があれば倍率方式で、なければ路線価方式です。
計算方法は自由選択できませんのでご注意ください。
・倍率方式
評価倍率表の中の「固定資産税評価額に乗ずる倍率等」という欄の倍率を、固定資産税評価額にかけた金額が、課税評価額になります。
固定資産税評価額は、国から送付されてくる固定資産税の納税通知書に記載されています。
・路線価方式
ほとんどの地域は路線価方式による計算方法がとられています。
路線価方式による課税評価額は、「路線価×地積(土地の面積)」です。
そもそも路線価とは、路線(道路)に面した宅地の1㎡あたりの評価額のことです。
日本全国の路線価はすべて国税庁が決定して公表しており、国税庁サイトの財産評価基準書のページや、各税務署等でも閲覧できます。
路線価は毎年7月初旬にその年度の公表されるため、
1-6月中に人が亡くなり相続が発生した場合は、7月の路線価発表を待ってから土地の課税評価額を確認し、
相続税の計算と申告・納付をするのが通例です。
相続税の申告・納付期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内ですので、
1月に亡くなったとしても7月の公表を待ってから相続税を申告・納付して問題ありません。
建物:固定資産税評価額を適用します。
固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に記載されている数値です。
マンションの場合は、価格欄に記載されている額は一棟丸ごとぶんの額です。
所有している部屋の固定資産税評価額は、課税標準額の欄に記載されていますので間違えないようになさってください。
■購入した建物を賃貸に出すとさらに節税になる
自分で使用している場合には、固定資産税評価額がそのまま課税評価額になります。
一方で、賃貸に出している場合は、借家権割合を差し引いた額が課税評価額となります。
ですから、購入した建物に自分が入居するよりも、賃貸物件として他人に貸し出した方が節税になるということです。
借家権割合は現在30%と定められています。
ただし、お金をとらずに無償で貸している場合や、家賃が明らかに安すぎる場合は、借家権割合の適用は受けられません。
たとえば、ご自身が所有する建物に、子どもたちを無料で住まわせている場合などが該当します。
■建築途中の建物も相続税の対象
現在建築途中の建物も、相続税の課税対象です。
建築途中の家屋の課税評価額は、費用原価の額×70%
費用原価とは、人が亡くなった日までに投下された建築費用の額を、亡くなった日当日の価額に計算し直した額の合計額のことです。
2.相続税対策をするならどんな建物が良い?
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2-1.購入するなら
購入する際は、立地条件や耐震性を事前に確認してください。
昭和56年以前に建てられた中古物件は、旧耐震基準で建てられているため耐震性に不安が残ります。
建築年月日などから新耐震基準で建てられたマンションかやタワーマンションであることを確認してください。
また、ワンルームマンションや、タワーマンションでも、売買実績が多い、かつあまり古くないものがおすすめです。
規模が大きくなればなるほど売買実績は少なくなります。
また、あまりに古くなりすぎると、建て替えなければならないですが、たくさんの人が所有しているマンションの場合、建て替えは難しいです。
場所も人気があるところの方がよいでしょう。
相続税対策を目的で購入したのに、いざ売ろうとしたら売れなくなったら意味ありません。
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2-2.持っている土地にアパートを建てる
土地を持っているのなら、アパートなどの家屋を建設することで相続税対策ができます。
土地の上にアパートを立てると、貸家建付地とみなされ、課税評価額を大幅に引き下げることができるからです。
貸家建付地とは、第三者に貸すための建物が立っている土地という意味です。
自宅用ではなく第三者に貸すための土地として制限されることで、課税評価額が安く見積もられるのです。
ただ、アパートを建てる以上、それは投資です。アパートを建てて、その後の修繕等の経費を合わせた支出分以上に収入があるかきちんとチェックしましょう。
3.すでに所有している不動産の相続税対策
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3-1.不動産を個人から法人所有に変更する
法人を立ち上げ、その法人にマンションなどを買い取らせて所有権を移します。
法人設立の際に、相続予定の人から株主を選び、代表取締役などに就任させましょう。
相続税が激減することはありませんが、所得税や住民税などトータルの税コストが下がります。
詳しくは税理士へご相談ください。
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3-2.小規模宅地等の特例を使う
小規模宅地等の特例とは、亡くなった人と一緒に住んでいた土地を相続した場合、330㎡までは相続税を最大80%減額する、というものです。
家族に自宅を遺したい場合に最適の特例ですが、知っていなければ税務署から教えてくれることはありません。しっかり知識として持っておいてください。
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3-3.生前贈与をおこなう
不動産を生前贈与すると、土地の価格上下を見越して自由に時期を選んで贈与できます。
土地が値上がりしそうであれば、その前に贈与するなどの手段が取れるというわけです。
また、自宅の場合、夫婦間で贈与する場合は、配偶者控除により最高2000万円までの控除が認められます。
4.まとめ
相続税は最大税率55%・最低でも10%とかなり重い税金です。
しかし税務署が節税の方法を教えてくれることはありません。
今回は相続税対策として不動産の利用についてご紹介しました。
いつの日か必ずやって来るその日のために、節税対策をしっかり確認して自らの財産を守りましょう。
畑会計事務所では、このような相続に関する疑問等に対し、サポートを行っております。
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